借金返済 債務整理|手形取引における過払い金の考え方

有印私文書偽造における逆転無罪
事務職
勤務
限定

主文


1 被告らは原告に対し,連帯して90万1608円及びこれに対する平成11年7月27日から支払済みまで年30パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを3分し,その2を被告らの,その余を原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由


略称 以下においては,被告丙を,「被告丙」ないし「丙」,被告丁を「被告丁」ないし「丁」,訴外Dを「D」,訴外Eを,「E」と略称する。

第1 請求


 被告らは原告に対し,連帯して138万9328円及びこれに対する平成11年7月27日から支払済みまで年30パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要


1 事案の概要


 本件は,原告が被告丙との間の手形貸付取引契約に基づき,被告丙に手形貸付けの方法により金員を貸し付けたとして,同被告及びこれに連帯保証した被告丁らにその連帯支払を求めている(被告丙の過払金を差し引いても138万9328円が残っているとする。)のに対し,被告らが,その主張する元本充当計算等によれば,既に過払となっているなどとして,請求棄却を求めてこれを争っている事案である。

2 争いがない事実等


(1) 原告は,中小企業に対し,手形貸付け等の金融業を営む株式会社である。
(2) 原告は,被告丙との間で,平成元年11月2日,以下のとおり,手形貸付取引契約(以下「本件包括基本契約」という。)を締結した(争いがない。なお,甲1,6,8,乙22,23,弁論の全趣旨。)。
ア 元本極度額 1000万円
イ 利率 その都度,原告と被告丙との合意による。
ウ 返済方法 手形面記載の満期日に,同記載の支払場所において,元金(手形金額)を手形決済の方法により一括返済する。
なお,手形貸付けの場合には,手渡金額を元本とし,原告は手形または貸金債権のいずれによっても被告丙に請求できる。
エ 期限の利益の喪失  債務者振出の手形が不渡りになったとき等は,通知がなくても一切の債務につき当然に期限の利益を喪失する。
 被告らが期限の利益を喪失したときには,年37パーセントの割合による損害金を支払う。
オ 特約 本件契約に基づく借入申込書は,反復継続取引における包括借入申込書とし,2回目からの借入申込みに際しては,手形の差入れをもって,借入申込書に代えるものとする。
カ 契約期間等 契約日より5年とする。
  契約満了時において,被告ら等から特段の申し出がないときは,同一条件でさらに5年間継続する。
(3) 被告丁,Dは,原告と被告丙との間の手形貸付及び証書貸付け等により生じた同被告の債務につき,甲第1号証の約定書を承認した上,それぞれ以下のとおり連帯保証する旨,原告に約した。
ア 被告丁について
(ア) 契約日  平成6年10月21日
(イ) 保証期間  平成6年10月21日から平成11年10月21日
(ウ) 保証限度額  600万円
イ Dについて
(ア) 契約日   平成6年6月9日
(イ) 保証期間   平成6年6月9日から平成11年6月9日
(ウ) 保証限度額  400万円
(4) 原告は被告丙に対し,別表(二)のとおり,6回にわたり各金員を手形貸付けの
方法により貸し付けた。
ア 平成7年8月11日 140万円
イ 同日         115万円
ウ 同年9月8日    100万円
エ 同年10月12日  115万円
オ 同年11月2日   190万円
カ 同年12月13日  125万円
合計          785万円
 なお,エの手形が,平成8年2月14日に不渡りになったため,本件契約第6条に基づき,同他の手形金債務についても,同日,期限の利益を喪失した。
(5) その後Dは,前項の6通の手形金債務に関する保証債務の履行として,平成8年2月20日,22日,23日に各100万円,合計300万円の弁済をした。
 原告は,この6個の貸金につき,被告丙に対し,36万2981円の利息制限法に超過した過払金があるとしている。
(6) 原告と被告らとの間では,別件訴訟があり,それは当裁判所平成○年(ワ)
第・・・号不当利得返還請求事件(その原告は丙及び丁,その被告は,甲[原告]),同裁判所平成×年(ワ)第・・・号不当利得等返還請求事件(その原告は,D,被告は甲[原告])である。
 同判決の主文は,甲が丙に対し,金175万3362円を支払えというものだったが,その理由中において,
ア 甲(原告)は,被告らに対し,前記(3)及び(4)の債権を有すること
イ 丙の主張のうち,各手形貸付金債権を1つにまとめて1個の取引として利息制限法制限超過利息(以下「制限超過利息」という。)を元本に充当する方法の主張については採用されなかったこと,すなわち,むしろ甲(原告)の主張するところの,制限超過利息は各貸付け毎に不当利得金員を算出し,これに基づき不当利得返還請求権を有すること
ウ Eの取得した信用保証料及び事務手数料(以下,両者併せて「保証料等」という。)は,「みなし利息」には該当せず,Eの取得可能なものとしたことが確認された。
 なお,同別件訴訟においては,原告(甲)は,相殺の主張をしなかった。
 因みに,同判決の結論は,控訴審でも維持されたが,丙(被告丙)らにおいて上告し,現在最高裁判所に係属中である。
(7) なお,原告は,別表(一)(二)の原告の被告丙に対する各貸金につき,平成3年1月21日以降の制限超過利息を算出した結果,原告の被告丙に対する不当利得返還債務を,合計346万0672円(309万7691円及び36万3981円)であるとした上で,前記(4)の785万円から,(5)の弁済金300万円を差し引いた485万円の残元本債権とを,対等額で相殺する旨の意思表示をし,同意思表示は平成11年2月18日に到達した。
 原告は,これにより,結局,同相殺によってもなお,被告らに対する貸付金として138万9328円が残っているとして,同金額及びこれに対する本件訴状の送達の翌日である平成11年7月27日から支払済みまで年30パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めている。
(8) 原告の貸付取引の形態
ア 原告の顧客に対する貸付けは,手形貸付けの形を取り,手形額面(すなわち,貸付額面額)から支払期日までの利息,調査料,手数料,取立料,保証料など(以下「利息等」という。)を天引した金額を顧客に交付し,または,顧客の当座預金口座に振込送金(以下,交付額及び振込送金額を併せて「現実交付額」という。)して,貸付けを実行し,担保手形の支払期日に手形決済により弁済を受けるという方式を取っている。
本件貸付けの取引も同様である。
 因みに,保証料等については,Eと被告丙との間の信用保証委託契約に基づくものであるところ,原告社員がその取立てを代行する。
イ 同取引のうち,現金を交付する貸付けの場合(なお,数口あるのが一般である。),1口目の1回目の交付による貸付けは,原告各支店の社員が,貸付額面額から弁済期日までの利息等を天引した額の現金を顧客方に持参し,貸付額面額を手形額面額とする第1回手形と引換えに現金を交付する。
 1口目2回目の貸付けは,第1回手形の支払期日の10日ないし14日前に,第2回手形(第1回の手形貸付けと同額であることが多いが,増減もある。)を原告に交付させ,第2回手形の支払期日までの利息等を,第1回支払期日当日に,その決済資金として,顧客の当座預金口座に振込送金し,さらにその2回目の手形の決済資金を,第3回手形により貸し付け,振込送金する。
その後,同一の貸付け,返済方法を次々に反復していく。このような鎖状に繋がった1本のラインは,口数毎にそれぞれ形成される。
(9) 本件包括基本契約に基づき被告丙の振り出した手形のうち,平成7年8月4日までになされた手形貸付けは既に決済されたものの,前記(4)の手形貸付けによる手形は不渡りまたは決済未了となっている。

3 争点


(1) 保証料等は利息制限法3条の「みなし利息」か
(2) 制限超過利息の元本充当計算方法(相殺・黙示の相殺)
 原告の一連の各貸付取引は,全体として1個の貸付けか。
 一連の各貸付け中,ある貸付けにつき過払金が生じた場合,別の貸付金に充当(相殺・黙示の相殺)されるか。
 天引につき利息制限法2条の適用の有無
(3) 過払金(不当利得)の有無,利息相当金の割合。
 民法703条,ないし同法704条の解釈とその利息相当金の割合
 原告の時効の援用等

4 当事者の主張


(1) 争点(1)(保証料等は利息制限法3条の「みなし利息」か)について
ア 被告らの主張
(ア) 利息制限法3条の文言
 まず,利息制限法3条には,「債権者の受ける元本以外の金銭」とある以上,原告が一旦債務者から保証料等の交付を受けている以上,その金員の行き先が,最終的にEという別会社であるとしてもなお,「債権者の受ける元本以外の金銭」にあたるというべきである。
(イ) 保証料等は誰のためか
 保証料等は,債権者である原告のためにある。一般に保証会社による保証は,債権者の債権回収の安全のため,すなわち債権者の利益のためのものであって,これを債務者等からみれば,保証会社の有無,代位弁済の有無は,代弁後に支払う相手こそ違ってくるとはいえ,支払わねばならない債務があることには何ら変わりがないところ,そうだとすれば,かかる保証に関する保証料等も,専ら債権者の利益のための支払であって,かかる債権者の利益のための保証料等を利息に追加して利息制限法を超えてまで支払わせることは,利息制限法の趣旨に反する。保証料等は,利息制限法3条の「みなし利息」に当たるというべきである。これをみなし利息としないと,貸金業者は利息制限法3条を潜脱するため,ことごとく別法人の保証会社を設立して高額の保証料の天引を行うようになり,利息制限法の趣旨は踏みにじられることになる。
 なお,保証料等は,これがないと,債務者は,貸付けが得られないのであるから,債務者の利益であるとして「みなし利息」にはあたらないとの見解もあろうが,しかしながら,この論法によれば,要するに債務者が借りるために支払うものは,名目の如何を問わずどのみち債務者の利益にみなされてしまうのであり,結局,債権者の受ける元本以外の金銭であっても利息制
限法3条の適用除外になってしまう誤りを犯している。
 せいぜい原告とEが別会社であるという点がポイントになりうるにすぎないが,これについても,原告が次々に別会社を作れば,自由に利息制限法を潜脱しうることになるし,そもそも,以下に詳しく述べるとおり,原告とEとは実質一体である。
(ウ) 原告とEの組織的一体性
a Eは
@ 原告の100パーセント出資の連結子会社である
A 原告の顧客に限って保証をしている
B 保証に関して独自の引受審査をしていない
C その取締役には,原告の代表取締役及び取締役数名が就任している
D 原告の旧支店建物内に本店を置いている
E その約25名の従業員の多くは原告の元従業員である
など,原告とは実質的な一体性を有するのであり,その一体性からして,Eの取得する保証料等が利息制限法3条のみなし利息にあたることは疑いがない。
b 乙第23号証(・・証言調書82〜103項)によると,Eには,経理部と管理部の2部門しか存在せず,保証会社にとって最も重要な保証引受審査部門は置かれていないほか,年間80万件を超える保証を行いながら(乙22・・証言調書91〜97項),平成8年ころまでは,従業員はわずかに20名程度しかいなかったのであり,原告も認めるように,Eの保証については,原告から独立した審査は全く行われず,保証引受や受託業務は,全て原告の支店において原告の従業員が行い,原告の貸付けには自動的にEの保証がなされてきた。
しかも保証料の額も原告が決め(乙23・・証言調書133〜135項),乙第9号証の2等の保証受託書は原告において保管がなされており(乙22・・証言調書255項),Eは,いつどこで誰の,いくらの保証をすることになったのか認識することがないのである。
c 原告の作成した有価証券報告書(乙16)によれば,原告の発行済み株式総数のうち,23・7パーセントをF及び乙という親族2人が保有し,役員全体の持ち株数のうち,99.5パーセントの株式を保有していること,同2名の役員は,Eの設立から現在に至るまで,同社の取締役であったこと,Eは,原告の100パーセント出資による子会社であること,連結子会社として,連結会計を行い,両社の利益は,連結剰余金計算書上に計上されて利益処分され,両社の社員に支払う退職金について,全額連結退職年金制度を採用していること,Eの保証は,原告の融資先に限られていること,原告の融資を保証する会社は,Eのみであること,原告の第28期決算期において,原告及びEの両者で貸倒損失は54億円に上るにもかかわらず,原告自身の貸倒は0円であり,引当金繰入額もわずか10万3000円にすぎず,その貸倒引当部門はなきに等しいのであり,Eが原告の貸倒引当部門として機能していること,以上が認められるほか,乙第32号証の1ないし3によれば,Eは,保証の際に独自の審査を行わずに,原告の行う審査のみで,保証をし,原告の施設や設備を借りて営業し,電話もファックスも共通であることが認められる。
d Eは,原告の100パーセント出資子会社であり,原告は2人の代表取締役等が実質的な支配権を持つことから,Eの取得するとされる保証料等は実質的に原告に帰属する。
e そもそも貸金業者が,保証会社の保証を立てるのは,顧客から貸付金の回収が困難になったときに保証会社から代わって支払を受けて回収を計り,貸金業者のリスクの分散・回避を計るためのものであるところ,しかしながら,Eは,原告が100パーセント出資して,連結して原告と相殺勘定をする原告の一組織にすぎず,Eは原告の貸付けのみを保証し,原告は全B”G”ての貸付けについて連結子会社たるEに保証させるというのでは,かかるリスク回避の機能を全く担うことにはならない(他の一般の保証会社につき,乙33)。
 しかも,原告は,貸付けの際,通常根保証人を何人もとり,利息については,高利を主債務者から吸い上げ尽くし,しかる後は,元本につき,保証人に対し,自ら回収に乗り出して保証人の生活を破壊しているのであるから,Eは,そもそも保証会社としてリスク分散回避の役割を果たしていない。
しかもEは年8パーセント前後という,1桁違う高額の保証料等を取っているのである。
Eの保証には,その実体がない。
f このように,原告とEは,利益も損失も,共同の利益主体に帰属し,Eが保証料等を受け取る合理的根拠はない。
まして利息制限法3条の「みなし利息」にあたらないとは言い得ない。
(エ) 貸付けにおける原告及びEの一体性
 Eと顧客との保証委託契約も原告の社員によって行われ,「保証料・事務手数料」も「利息」「調査料」等と一緒に天引され,『保証受託書』は『貸付明細書』と一体となった1枚の用紙であり,原告が後日一括して受領している。
顧客が原告から借入をするときには,Eに対し保証委託をすることが,貸付けの必須の条件となっているものであるところ,このように原告の貸付け及び利息等の受入れと,保証料等の受入れは一体である。
 なお,原告は,最近顧客に対し,元本用の手形と利息用の手形を分けて振り出させているところ,後者,いわゆる利息手形によって,元本以外のもの全部,すなわち利息のほか,保証料等をも一体として支払わせているもので,原告自身利息と呼んでいる(乙35)上,この利息手形も,原告の銀行口座に預け入れられ,主債務者の当座預金口座からの引き落としで決済されている。
また原告自身,そのパンフレット等において,保証料等を含めた実質年率といった表記の仕方をしている(乙36,28)ほか,Eの設立後,原告は,その『保証付融資取り扱い要領』等において,以後は保証料等を受け取る代わりに,利率等を引き下げる旨言明している(乙37の1ないし5)が,Eの設立の前と後で,各名目の合計額は年率35パーセント前後で,変わりがない。しかも保証料等は,年7,8パーセントと,他の保証会社と比較して桁違いに高く,このような高さは,原告の受け取る利息が高いことを隠蔽するために,名目上分散したものにほかならない。
(オ) 債権回収における原告とEとの一体性
 一般の金融機関と保証会社であれば,債務者に支払遅滞が生ずると,金融機関は,一括支払の催告の後,直ちに保証会社に代位弁済の請求をするのであり,金融機関が自ら訴訟等の法的手段に至る例は全くないが,原告の場合,債務者の支払がなされないときには,自ら仮差押えや,債務者,保証人に取立訴訟を提起して,回収に当たっているのであり,不渡り後直ちにEに代位弁済請求をしないのは,両者が損益を共通にし,実質的に一体だからである。
Eは,従業員数が極めて少なく,自ら回収にあたるときも,原告の名を騙って回収していたこともある(乙23,・・証言調書29,162〜168,271)。
 のみならず,Eが代位弁済したとして請求があった後で,原告が訴訟を起こしたり,未だ原告に債権が残っているとして公正証書の作成を要求したりすることや,原告がこの種過払金請求訴訟の相手方・被告となり,かつ反訴を提起した後に,代位弁済が済んでいることが判明したケース等もあった。
 また,信用保証委託契約書(乙6)の5条には,Eの代位弁済につき,債務者に通知が不要とされているところ,かかる通知は,債務者の二重弁済の危険を防ぐためのものであるが,かかる通知が不要となるのは,まさに原告とEが実質に一体であって,二重支払の危険がないからこそ,その手間を省いたにほかならない。
 さらには,原告元代表取締役Fは,平成10年8月6日に原告管理部社員及びE宛に『管理部社員の増員と管理部の機構改革について』と題する書面を社長名で送付している(乙43)。これは,Eの商業登記簿上の代表者は,Gであるにもかかわらず,両社の代表取締役社長は,会社を分けても,乙以外にはないこと,債権回収を同一の方針により行っていること,Eが原告の一部に組み込まれた組織であるにすぎないことを示している。
(カ) 原告の監督官庁の処分
 原告の元従業員が,原告の従業員の地位のまま,Eの求償権の行使をする際に,「じん臓を売れ,目玉を売れ」などど脅迫的取立てを行った恐喝未遂事件につき,原告の監督官庁である近畿財務局は,貸金業規制法21条に違反したとして,原告に対し,業務停止の行政処分をした。
同財務局は,原告とEが一体であることを認定したからこそ,同法21条に違反するとの認定となったのである。
この処分及びその前提となった両社の一体性は,公知の事実といってよい。
イ 原告の主張
(ア) 原告とEとは全く別法人であるから,Eの取得した保証料等は,利息の性格を有するものではなく,利息制限法3条所定のみなし利息には当たらない。
利息制限法3条のみなし利息の規定は,「債権者」が受け取った元本以外の金銭を利息とみなすものであり,「債権者」である原告以外の者であるところのEが,受け取った保証料等をみなし利息にあたるということはできない。
a そもそも保証料とは,被告とEとの間の信用保証委託契約に基づき,支払われる信用保証の対価であって,貸倒のリスクの大きい債務者の信用を補完するもの,すなわち,信用保証という固有の目的に従った独自の制度であるから,これを利息とみなすことはできない。
原告の顧客は,銀行等で融資を受けることが困難な債務者が多く,貸倒のリスクは,一般銀行の貸付けに比較して高いものであり,かかる貸倒の危険を分散するため,Eが高額の保証料を取得することには合理性がある。
b しかも原告の貸付けに際して天引された保証料等については,原告から全てEに手渡されており,原告はこれによって,利益は受けていないのであるから,かかる保証料等は,元本使用の対価とはいえず,利息制限法3条の「みなし利息」には当たらない。
c 保証会社は,どこでも母体行の保証債務を行うものであり,Eの業務が原告の保証のみを行っていることは問題とはならない。
d 乙第6号証の被告丙とEとの間の信用保証委託契約によれば,被告丙は,保証料等をEに支払うこと,一定の金額,一定期間の取引につき,信用保証の委託をなすことが明記されている。
 そうした中,各貸付けの都度,被告丙は,保証料,手数料,保証金額の明記された保証受託書をEから交付を受け,各貸付けにつき,保証料等をEに支払っていたから,被告丙は,Eとの間の信用保証委託契約の締結及び同社への保証料等の支払につき,十分な認識があった。
(イ) Eは,信用保証業務を専業とする,原告とは全くの別会社である。貸付業務をなす原告とはその目的を異にする。
 Eは,原告の100パーセント出資子会社であるが,保証料等及び債権回収等を収入源とし,代位弁済額と人件費等が主たる支出である。
 保証料は,債権回収額に対して貸倒に伴う代位弁済額を拠出するに足りるだけの額として定めている。
 代位弁済額は,平成10年度は,月当平均47億円,平成11年度は月当平均52億円程度であり,その都度Eから原告に小切手決済の形式で支払われている。
 Eは,保証料等の徴求,管理債権の回収及び代位弁済の実行業務を独立採算で運営しており,原告とは,独立した利益事業体である。
 なお,個々の保証委託契約の締結,保証料徴求については,原告の営業社員が原告とEとの契約・覚書(乙7の1ないし3)に基づき事務代行してもらっているにすぎない。
その対価はEにおいて支払っているし,こうした関係は,多くの金融機関とその保証会社との間でなされているのと同様である。
(ウ) 原告とEの役員の一部兼任
 被告らは,原告の取締役とEの役員とが混在していると主張するが,そもそもEの元代表取締役であるG及び桐明智徳は,原告の取締役ではなく,また原告の取締役については,Eの役員を兼任しているとしても,一般的にいって,親会社が子会社の役員を兼任することは多くあるし,保証会社についても同兼任が同様に存在する。
(エ) Eの従業員について
 Eの従業員は,原告の元従業員であった者から,出向転籍した者も多数いるが,転籍にあっては,原告会社から退職金が支給され,社会保険等も全部Eに切り替えがなされ,純粋なEの従業員となる。原告従業員とは区別されている。
(オ) 連結決算
 連結決算の点についても,これは,原告が上場企業であることと,Eがその100パーセント出資子会社であるために,投資家保護の観点から,証券取引法上要請されていることであり,連結決算をもって,両会社が法人格が同一であると断ずることはできない。
 財務諸表の連結の前提は,法律形式を離れた経済的実態の認識を出発とする。
同連結は,企業集団の活動の実態を把握することが目的であり,集団を構成する各社の法的権利義務を一体化したり,共同の利益主体として具現化するものではなく,親会社を中心とする企業集団の真の実態を連結会計という手法で,一般投資家に対し,開示することにより,その投資の判断の助けとするにすぎない。
従って,原告とEにつき連結会計がなされていることが直ちに,Eが原告に対し,経済的に同一で,経済的独立性がないということはできない。
 Eは,確かに原告の100パーセント出資子会社であるとはいえ,代位弁済を受けることにより,原告は,金融会社としてのリスクを回避できるのであり,100パーセント出資子会社であったとしても,その損失を親会社で原告が負担するものでもなければ,ましてやその利益を100パーセント取得するものでもない。
原告とEとは連結会計処理を義務付けられているが,連結会計処理をすることと,法人として同一かということとは別の次元の問題である。
(カ) 保証料等と保証債権との相殺消去について
 被告らは,原告のEに対する保証料等の支払債務と,原告のEに対する保証債権とが相殺消去されている可能性がある旨主張する。
 しかしながら,保証料等は,原告にとっては,預かり金,すなわち負債として計上されるのに対し,Eにとっては,「収益」として計上されるものであるが,会計の基本原則として,負債と収益が相殺されることはあり得ないし,現に,原告の連結会計においても,有価証券報告書においても,会計原則に反する記載はない。
 さらに被告らは,原告の損益計算書上で,原告とEとの相互の取引,すなわち,保証料等の交付と代位弁済金の支払自体,相殺消去されている可能性があるとの主張をしている。しかしながら,この点も会計原則の誤解である。
すなわち,保証料等の交付は,原告の会計上,借方として預り金(負債)の減少,貸方として,現金預金の減少と貸借対照表上表示されるものであり,また代位弁済金の支払は,借方としては,求償債権の増加(資産),貸方としては,現金預金の減少として,貸借対照表上表示されるのであり,従って,被告らの主張のような,損益計算書上の相殺消去はあり得ない。
(キ) 代位弁済の実行や訴訟提起,現実の回収業務について
 Eは,まず,同社管理部が回収業務を行い,事実上の回収が見込めない事案,あるいは顧客,または保証人に代理人が選任された場合等につき,訴訟提起しているもので,その数は年々増加している(乙21)。
 Eの業務が一部原告の施設を借りて行っていることは事実であるが,これは全ての支店においてなされているものではないし,地方でのEの活動において独自の支店を設けることが経済的に合理性がないために行われている措置であって,これをもって,Eを原告と同視することはできない。また,保証料等の事務手続を原告が肩代わりしている点についても,どの保証会社についても当てはまるところである。Eは当初こそ,小規模の陣容であり,親会社の助力等を多々受けていたものであるとはいえ,これはどの子会社においても当てはまる類のことであり,実際その後,徐々に組織・体制を整え,現在では,支店数も11店となり,社員数も200名を有し,審査部門も設置され,活躍しているのである(甲20の1ないし3,31,32の1,2)。
(ク) 利息制限法超過利息や利息の低減との関係
 原告の定めた金利及びEの定めた保証料等は,貸倒の危険度を認識された上でなされたもので,被告らを含む顧客はこれを認識して契約している。
 原告が保証会社を設立することは,実質金利を下げた分,利息を保証料等にすげ替えたにすぎないわけではない。
原告が保証会社を設立することは,当該債権管理のコストが保証会社に転嫁されることになるのであるから,それに応じて原告の課す金利が下がることは当然である。
これはあたかも例えば,建物を担保にして融資をする際には,貸倒,つまり建物の滅失する危険性を考慮しなければならないが,この建物に火災保険や地震保険がかけられていて,この保険金請求権に質権等を設定できるときなどには,建物が滅失する危険が保険に転嫁されることになるのであるから,貸付額はその分増大させることができるのと同様の理である。
 なお,税金関係についてみても,行政手続上,Eで納税済みの保証は,これを前提として,単体として納税が完了している。
(ケ) まとめ
 以上によれば,Eの徴求する保証料等は利息制限法3条の「みなし利息」には該当しないことは明らかである。
(2) 争点(2)(制限超過利息の元本充当計算方法,なお相殺及び黙示の相殺)
ア 被告らの主張
(ア) 原告の貸付取引の形態
 原告の貸付けの形態は,利息天引による手形貸付けの方法によるものであり,手形額面(貸付けの額面)から支払期日までの利息,調査料,手数料,保証料等(以下,併せて「利息等」という。)につき天引をした金額を顧客に交付し,または顧客の当座預金口座に振込送金して(以下,交付額ないし振込送金額を「現実交付額」という。),貸付けを実行し,担保となった手形の支払期日に手形決済により弁済を受けている(なお、具体的には,前記2(8)のとおり。)。
(イ) かかる貸付けの性格をどうみるか,であるが,そもそも原告において,利息等の継続獲得を唯一の目的として,長期にわたり頻繁に貸付けを繰り返すものであり,その実,包括基本契約に基づく,いわゆる借換と借増しの繰り返しであって,サラ金業者の行う包括基本契約に基づく継続貸付けと異なるところはないのであり,全体として1個の貸付取引とみるのが相当である。
 仮に,貸付けを1個のものとみないにしても,ある貸付けについて生じた過払利息は別口の貸付けの利息・元本に充当されることになるので,利息制限法2条を適用せずに,現実の交付額を元本として同法1条1項を適用し,全体を1個として,過払金が発生するたびに順次残元利金に充当していく計算によるべきこととなる(以下「連続計算」という。なお長尾治助の「判例貸金規制法」における指摘参照)。
(ウ) 利息制限法1条1項と2条との関係等
 天引貸付けが複数ある場合に,利息制限法2条の適用を前提として,その1つに生じた過払金を他の貸付けに充当するとなると,充当の前後でその充当を受ける該貸付けの元本額が変わってくることになるが,これでは,そもそも該貸付時における超過天引利息の元本充当計算ができなくなって,充当計算は不可能になる。
 すなわち,利息制限法による利息制限の根幹は,1条1項であり,2条は,現実受領額を元本として1条1項を適用したのと同一の結果をもたらす範囲内でのみ,天引契約の自由を認めたにすぎない付加的な規定である。
 最判昭和39年11月18日判決(判時390ー8)(以下「昭和39年最判」という。)及び同昭和43年10月29日判決(判時538ー40)(以下「昭和43年最判」という。)によれば,貸主が借主に対して数口の貸付けを有する場合に,1つの貸付けにつき,元利金が完済されて過払金が発生した場合には,同過払金は,当然に別口の債権に充当されるとしている。同一貸付けについてのみ充当を認め,これにつき過払となった場合にも,他の貸付け分については,充当を認めないとすると,同じ金額を貸し付けようとする場合でも数口に分ければ,元本充当を免れる不都合があるからである。
同各最高裁判決によれば,過払金の別の貸付けへの充当につき,同別の貸付けにかかる貸主の期限の利益(支払期日まで制限利息を取得する利益)を完全に否定し,過払金の発生時点において,直ちに別口債権への充当をなすものであって,しかも同各最高裁判決は,天引のある場合とない場合とで,何ら区別はしていないし,また例外も認めていない。
また認めるべきではない。
 なぜなら,別の貸付けが天引貸付けであって,それにつき利息制限法2条の適用による超過利息の名目元本への充当がなされている場合,この過払金による充当は不可能となるからである。
 なお,利息制限法2条は,その制定当時,過払金による別の天引貸付けへの充当という事態が全く考慮されていなかったのであり,それが前記2つの最高裁判決によって,その適用範囲を狭められ,天引貸付けについて,他の貸付けにかかる過払金の充当が問題となる場合,すなわち,本件貸付け取引の如く,多数の天引貸付けの集積がなされる場合には,そもそもその適用がなく,単発の天引貸付けの場合のみ適用されることになったと解するのが相当である。
(エ) これを本件につき,当てはめると,原告主張の最終未払金の額を前提に,被告らの主張する計算方法(現実の受領金額を基礎とする)によって引き直せば,原告は,実に26・05パーセントもの利息制限法違反の利息を取っていたことになり,利息制限法を潜脱していたことになる(しかも連続計算方式は,実務上債務整理等で定着しており,事実たる慣習にもなっていたにもかかわらず,原告のような計算方法を認めることは,実務に大きな混乱をもたらす。)。
(オ) 原告の主張に対する反論
 原告は,原告の一連の貸付けを1個の貸付けと見られないとする理由の1つとして,原告の貸付けの場合,手形の決済期日に新たな手形貸付けが行われるが,その額面や利率等が変わることがあると主張するが,しかしながら,かかる変動は,銀行等,他の金融機関等による手形貸付けについても,借換え(借増し)の際,額面や利率が変わることは極めて日常的な事柄であって,1個の貸付けとみる支障にはならない。
 また原告の貸付けが利息を天引する貸付けであることや,各貸付けの弁済は手形の決済によってなされることについても,手形が単に決済の手段にすぎない以上は,同様に問題にならない。原告とサラ金業者との違いは,手形を利用したか否かの違いにすぎない。
手形を用いれば,支払期日が存在し,その各期日に決済がなされることはむしろ当然のことであって,手形貸付けであることが,貸付けの別個性の根拠とはなり得ない。
なお,原告の手形の利用は,手形不渡りを恐れる顧客の心理につけ込むものである。
 さらに,原告から顧客には,その当座預金口座に現金が振り込まれるので,要物性の要件を満たしているという点についても,原告自身,新貸付けは旧貸付けの切替えである旨認めており,かつ旧手形の決済日の午前9時ジャストに,その決済資金の融資のために新貸付けを実行するという,厳格な振込送金手続きをとり(いわゆる「同日実行」,・・・証言調書184,185,193),流用の可能性を排除している(現金交付はしない,同証言調書72)ことに照らしても,新貸付けは旧貸付けの書き換えであるにすぎない(不渡り倒産を覚悟したのでもなければ,顧客が新規貸付金を他に流用することは不可能である。
なお,流用の可否と貸付けの1個性とは関連性がない。)。しかも,現実交付を受けても直ちに前の手形の決済に充てられるという問題点もあるが,この点をさておいても,要物性の具備があったからといって,1個の貸付けとみなすべきことになるものではない。
(カ) 昭和39年及び昭和43年各最判の充当理論
 仮に,原告の一連の貸付けを各別個の貸付けとみるとしても,前記昭和39年及び昭和43年各最判によって確立された過払金の充当理論がある以上は,ある貸付けについて発生した過払金は,他の貸付けに当然に充当されることになり,結局,天引後の現実の交付額を元金として被告ら主張の連続計算をすべきこととなる。
その意味で,利息制限法2条は死文化する(前掲最高裁判決も,利息制限法1条1項の趣旨を徹底して,「法律上の無効」[裁判外でも無効]と解するに至り,同法2条を死文化させた。
なお,貸金業規制法は,14条,17条において,実質年率ないし実際に利用可能な金額の記載等を要求しているほか,18条において領収書の交付を要求し,天引という態様の貸金をそもそも予定していない。)。
またそのように解しないと,実質的には1個の貸付けを数個に分けることによって,元本充当の解釈が容易に潜脱されてしまい,利息制限法の根本趣旨である債務者保護の趣旨は著しく後退してしまう。
 なお,債権者の期限の利益というのは,原告のみが主張しているにすぎないことであって,前掲最高裁判決は債権者の期限の利益を考慮することなく,過払金の別口の貸金への充当を認めている。利息制限法違反の高利貸しに期限の利益は存在しない。
 要するに,利息制限法2条は死文化していることを前提に,その計算は,新貸付けにつき現実交付額を元金として制限利率による利息計算を行い,他の貸付けの過払金をその発生時に,新貸付けの残元利金に充当して差し引き計算をすればよいことになる。
なお,過払金発生後の新貸付けであれば,元金に充当または相殺するのが適当である。
これは前掲各最高裁判決の理論や趣旨からすればそのようになるはずであるし,それが当事者間の公平にも適する。
(キ) 相殺ないし黙示の相殺
 仮に,本件一連の手形貸付けをそれぞれ別個独立の貸付けとみるとしても,過払金と本件貸付金との間で相殺が可能なはずである。
 たとえ,旧貸付けが弁済により一旦は消滅しているとしても,相殺の遡及効により,過払金によって新規貸付けとの相殺は可能なはずであるし,そもそも,債務者にとっては,適時的な相殺の意思表示は困難であり,せめて,債務者において,過払金があるにもかかわらず,新たな貸付けを受けたことをもって,黙示の相殺の意思表示があったと認めるのが相当である。
イ 原告の主張
(ア) 本件各貸付けの別個性
 本件各貸付けはそれぞれが別個独立のものである。被告らの主張は,本件における当事者の意思,合意,手形貸付けの特殊性を度外視した独自の見解である。
 包括基本契約と,各貸付けが別個であることは,例えば,銀行の取引約定においても実行されており,包括契約をなした上で,証書貸付け,手形貸付け,担保権設定付き貸付け等がなされている。手形貸付けにおいても,貸付け毎に手形面上で支払期日が特定されているのであるから,手形貸付けは数個あっても,これを1件と評価されることにはならない。
 たとい基本契約において,5年という枠が決まっているからといって,かかる基本契約内における複数の契約を,まとめて1つの契約があるにすぎないとみなすことも困難である。現に住宅ローン等において,3000万円の貸付けの場合に,あえて1500万円ずつの2口の契約がなされることもあるが,これをひとまとめにして,3000万円のローン1本の契約があるにすぎないとみることはできない。そもそもこれらは支払期限や利息の率も,必ずしも同一ではないのであり,そしてそれは原告と顧客との関係についても同様である(期限の利益は債権者のためにもあり,しかも現に毎回の貸付けに手形の振出しを受けている以上は,これを形式的なものとして,債務者が奪うことはできない。)。
なお,利息制限法違反の貸付けは1本の一体的な貸付けであるが,同法に違反していない貸付けは個別独立の貸付けとみなすこともできないのはいうまでもない。
 なお,原告被告の貸借が,手形書換えと同視し(本件貸付けの別個性)うるかについて,確かに,諾成的消費貸借契約は認められないとはいえ,原告は,被告との間で,各貸付けに関し,貸付け日と返済日を合意して,現実に当座預金に送金等(現金送付もある)をして,現実に貸し渡したのであるから,本件の全部につき,各貸付けが成立していたことは疑いがない。
(イ) しかも,本件は,手形取引約定書記載のとおり手形貸付けであり,被告は商人として同各消費貸借の締結の際,必ず手形を振り出しており,満期日に決済して弁済している。
また貸付けの際,計算書(貸付明細書)を交付している(同約定書3条の1)ほか,返済期限及び回数は手形面記載の満期日に手形金を一括返済する旨合意されている。
(ウ) さらに,両者間の手形小切手郵送契約書によれば,被告が新たに借入れを希望する場合には,借り入れ希望日の5日前までに約束手形を原告に送付することとされており,これをもって,新たな借入れの申込みである旨記載されているところ,本件でも被告は,自らの意思で1回1回約束手形を送付して積極的に手形貸付けの申込みをしていた(被告が新規借入を希望しなければ,原告に手形を送付しなければよいのであり,新規借入の有無は,被告の自由な判断によるものである。)。
(エ) 個別の信用判断
 のみならず,原告は,貸付けの相手である企業に対し,信用管理を徹底しており,1回の貸付けごとに信用情報機関に借入れの増減,担保設定の増減の変化を把握し,貸付けの稟議をし,手形決済がなされるかにつき,与信判断の資料としている。
 なお,この点,被告は,顧客がもはや銀行からは借りられない信用のない者で,短期間で借金返済できない零細事業者であることを知りながら,5年もの長期の貸付けを予定しつつ,過払金の元本充当を回避するために,3,4か月の短い貸付期間が設定されたと主張するが,原告の定めた貸付け期間が主として3,4か月であるのは,貸倒リスク回避を目的とする与信管理の結果であり,また,顧客の利用需要との兼ね合いもあるのであって,自由競争市場原理を前提とする以上は,原告の主張する非難は当たらない。
(オ) 被告らの流用可能性等
 被告らは,旧手形の決済日に新規貸付けにかかる金額が被告丙の当座預金口座に振り込まれることをもって,同新規貸付金を旧手形の決済のため以外に流用することはできないと主張する。
 しかしながら,被告丙の口座に振り込まれた新規貸付けの金員は,同被告の独自の資金と混在化され,原告のコントロールの下にあるものではなく,被告丙において如何様にでも処分可能である。
現に,同金員が旧手形の決済に利用されず,新旧手形の両方につき不渡りを受けた事例を原告は経験している(いわば二重の不渡り)。
 被告丙の当座預金に振り込まれた金員は,結局原告に環流するにすぎない顧客の自由な利用が不可能なものというわけではない。
これはあくまで顧客の預金として成立し,原告の法的拘束下にはない,被告丙の利用可能な財産となる(原告の一般財産・他の当座預金に混入し,区別特定ができない)。
仮に同金員の使途につき,原告と被告丙との間で特段の約定がなされたとしても,当該当座のある銀行はかかる約定に拘束されるいわれはないし,顧客が振込金を約定とは別の使途に用いた場合には,原告は如何ともしがたい。
 しかも新規貸付けと旧手形の決済とでは2日ほどの時間的ずれがあり,大阪地方裁判所平成2年1月19日判決とはそもそも事案を異にする。
(カ) その他,原告の貸付けは,被告の主張する「切り返し」による貸付けのみではない。
旧手形の支払期日とは無関係の貸付けが多数存在するのである。これを原告の都合による「貸付け」にすぎないなどと断定することはできない。
(キ) このように,原告と被告との取引が,単に利息を支払って貸付けを継続していく取引ではないことは明らかであり,手形貸付けの度に,1回1回の取引が発生し,当座上の決済により終了するものである。本件の各貸付けを1本とみることはできない。 
(ク) 自動的な充当の可否(自動的な相殺)等に対する反論
a 先に述べたように,本件貸付けはそれぞれが別個独立のものであるから,利息制限法による制限を超過した過払金は,別の貸付金の元本に自動的に充当されることはない。
 本件の場合,原告被告間の取引は手形貸付けであるから,その当然の帰結として,各貸付けの弁済は,約束手形の当座決済という形でなされるから,同決済によって,この取引は完結するのであり,従って,弁済の対象となる債務がどれに当たるかは,当事者間において,極めて明確に特定されているから,それぞれの過払金が不当利得返還請求権として存在するのみである。
b 被告らの引用する最高裁判例は本件には不適用
 被告らの引用する最高裁判例は,あくまでも当事者間に複数の貸付けが存在する場合の過払金の充当に関するもので,かつ民法491条の規定にかんがみ基本的に当事者の合意(充当特約)に従って充当されるとしているにすぎない。
然るに,本件については,各手形貸付金は,その支払期日に,1回毎に個別に決済処理されることが合意されていて,その決済の都度,貸付元本は消滅していたのであるから,その充当の対象となるべき元本は消滅(するとともに過払金が発生)していた。
要するに,本件の場合,民法491条の適用を排除する特段の事情があったのであり,本件は,そもそも前記最高裁判決とは事案を異にし,よって,被告らの主張は理由がない(また,仮に,同条の規定が適用になるとしても,各債権の弁済期との関係で,被告ら主張のとおりに順次元本に充当されることにはならないし,また,充当の指定もない以上は,結局,相殺の可否が問題−それは意思表示があって始めて意味を持つ−になるだけである。)。
 なお,その後の昭和43年最判によれば,過払金が元本に全部充当されて,元本が消滅した後に弁済された利息損害金は,不当利得返還請求できるとされたものである。然るに,昭和39年最判の場合,貸付け元本債権が残存している場合であったから,民法491条を持ち出さなくとも,直截に超過制限利息の支払を無効として,その分の不当利得返還請求権が発生しているとして,これを貸金返還請求権との相殺をするとの解釈をしてもよい事案であったところ,利息制限法1条2項が,超過制限利息については返還を求めることができないと明記されていることから,苦肉の策として充当を認めたにすぎない。
然るに,昭和43年判決は,不当利得返還請求を認めたのであるから,もはや苦肉の策を使う理由がないし,当然に充当されるとすることはかえって債務者の意思に反する結果となる。
そもそも不当利得返還請求権を認める以上は,その返還請求権の行使や処分については,権利者の意思に委ねられねばならない。
そうでないと,総債務が完済されない限り,超過部分の返還請求ができなくなるし,別口の債務が弁済期未到来のときは,期限前弁済を強いられることにもなる。

3 争点(3)(過払金の有無,利息相当金の割合等)


(1) 被告らの主張
(ア) 利息相当金は年6分である。
 仮に,本件一連の手形貸付けをそれぞれ別個独立の貸付けとみるとしても,原告は貸金業者であるから,過払金を受領する法律上の原因のないことを知っており,各過払金につき,年6分の割合による利息相当金を付加して支払わねばならない(民法704条,商法514条)。
利息相当金の率については,原告が商人たる貸金業者であり,利得したものが金銭であることから,商事法定利率年6分によるべきである(『事務管理・不当利得・不法行為上巻』〜四宮和夫著94頁,名古屋地裁判決昭和47年1月27日訟務月報19−4−149,広島高裁判決平成12年9月20日,乙55の31頁)。
(イ) 相殺
 前記のとおり,仮に,本件一連の手形貸付けをそれぞれ別個独立の貸付けとみるとしても,過払金と本件貸付金との間で相殺(黙示の相殺を含む)が可能である。
a 自働債権額
 そして,被告らが期限の利益の喪失をした(手形不渡り)平成8年1月22日までの各過払金とこれらに対する各利息相当金を計算すると,別紙「過払金及び損害金計算表」記載のとおり,合計448万6295円となる。
b 受働債権額−被告らの期限の利益の喪失時における原告の被告丙に対する債権額
 前記のとおり,被告らの期限の利益の喪失は平成8年1月22日であるところ,そのときに存在した原告の債権額は,現実受領額に期限の利益の喪失日までの制限利息を加えた額をもって,元本とし,これを基にして,同喪失日の翌日である同月23日から遅延損害金が生じると認めるのが相当であり,これによれば,別紙「H8.1.22における法定残元金」記載のとおり,
合計733万7598円となる。
 なぜ,かような計算によるかといえば,それは,現実受領額に弁済期日までの制限利息の額を加えた額を元本として計算した遅延損害金を,期限の利益の喪失をした日の翌日から求めるというのであれば,期限の利益を喪失した日の翌日から弁済期日までの間,利息と遅延損害金を二重に取得することになって,不当だからである(佐賀地裁武雄支部平成12年12月20日,乙56の45,46頁)。
c そして,前記の被告丙の原告に対する過払金返還請求権(448万6295円)と,前記原告の債権(733万7598円)とを,期限の利益を喪失した日である平成8年1月22日において,対当額で相殺する旨の黙示の意思表示をなした。
その結果,原告の被告らに対する貸付残高は285万1303円となった。
d さらに,連帯保証人Dは,平成8年2月23日までに,原告に対し,本件に関し,300万円の支払をなしたものであるところ,同日現在の被告丙の残債務は,292万6292円であったから,同弁済により,原告の被告らに対する債権は全部消滅した(過払金7万3708円)。
e 以上のとおりであって,結局,原告の請求はいずれも棄却されるべきである。
(2) 原告の主張
(ア) 消滅時効
 仮に被告丙において,原告に対する過払金があるとしても,原告は,平成元年11月2日から平成3年3月29日までの過払金及び損害金は,既に時効により消滅したものであり,これを平成13年6月1日付け準備書面をもって援用する旨の意思表示をする。
 被告は,過払金及び損害金の主張をしていたのは,平成13年4月10日付け準備書面においてであるが,上記援用によって,平成元年11月2日から平成3年3月29日までの過払金及び損害金は,時効により消滅した。
(イ) 利息相当金は年5分である。
 なお,平成3年10月11日以降の損害金については,年5分の割合による利息相当金によるのが相当であり,結局,別紙の明細のとおり,総計26万9961円となるにすぎない。
 被告らは,商事法定利率である6パーセントを主張するが,しかしながら,かかる過払金の発生根拠は,民法に基づく不当利得返還請求権であるから,商事法定利率は適用にはなり得ない。
 因みに,仮に,被告らの主張する6パーセントの利率に従ったとしても,32万0030円の利息相当金が計上されるにすぎない。

第3 争点に対する判断


1 争点(1)(保証料等は利息制限法3条の「みなし利息」か)について


(1) 前記当事者間に争いがない事実等及び証拠(甲1ないし37の3,乙1の1ないし56)によれば,以下の事実が認められる。
ア Eは,平成3年5月に設立された原告の100パーセント出資子会社であって,原告とEは,代表取締役は共通ではないが,役員も共通した者がいる。
全てが共通しているわけではない。
 Eは,原告の貸付けについては,全部信用保証するところ(年間80万件),その際,保証の当不当につき,1件1件の審査はしていない(なお,貸付明細書と保証受託書とは一枚の紙になっている)。
 Eが信用保証するのは,原告の貸付金についてのみであって,他の会社のそれについては全く信用保証していない。
イ 原告の本支店は,全国で200以上あるのに対して,Eについては,京都市内に本店があるだけで(原告の旧支店の建物内にある),支店はなく,全従業員数は,平成8年当時は,管理部経理部を含めて,21名,平成10年当時でも50名程度であった(人事部はなく社長等の役員が人事を決めている。)。
その従業員のほとんどは,原告の元従業員で,原告を辞めてEに入ったものである(なお,元原告の従業員でなかった新規採用者もEにはいる。)。
 Eの従業員の何人かは,本店所在地以外の地に部長として出向させれられており,札幌,東北,東京,大阪,名古屋,福岡に1人ずつ,原告の支店店舗の一部を間借りする形で配置されている。例えば原告福岡支店にいるEの従業員村上は,九州一円の原告の貸付けに関する信用保証案件を受け持っている。
ウ Eの収入源は,原告の貸し付けた顧客から徴求する保証料等である。
その保証料等の収入は平成9年度3月時点の決算時において,206億円であった。
 保証料等の取立て等については,原告が,自らの貸付金の元利等を取り立てる際に,併せて同保証料等も,Eに代行して取り立て,一旦原告の経理に計上した上,月2回の割合でEの預金口座に送金する手続を取る。
エ Eは,原告の顧客に不払い等の事由が発生したときには,原則として2か月後に代位弁済を行うことが取り決められており,債権回収のため,原告において訴えを提起するなどしたものを除き,不払い等の事由が生じた顧客の債務については,実際に代位弁済が原告になされていた。
なお,同代位弁済後,Eの代位に基づく求償債権の回収については,これも原告が,Eに代わって取り立てるなどしていた。
これは,Eよりも原告の方が知名度が高く,債権の回収にはより都合が良かったからである。
 もっとも,Eが自らその名で,その求償金債権につき,訴訟を提起したのは,平成10年度で48件あり,これは全体の1割程度であった。
オ Eの担当者の証言調書によれば,原告とその顧客の間の貸金に関し,原告がEを設立して,これに貸金の信用保証させるメリットは,少なくとも顧客の立場からすればない,としている。
カ 連結財務諸表について
(ア) 関連企業に関し連結財務諸表の作成が要求される趣旨等につき,染谷恭二郎『現代財務会計』によれば,「今日の企業は・・・1企業が必ずしも1会社になっているわけではない。
1企業が2以上の会社に分けて営むことも少なくない。
製造会社が,その営業部を独立させて自社の製品を販売する販売会社をつくっている場合などは,その典型的な例である。
このような場合,会社はいくつあっても,経営の主体は1つである。
これらの会社は,統一的な意思のもとに,単一の組織体として経営される。
これらの会社群を企業集団という。」「1企業の活動が2以上の会社をもって営まれる場合,実質的な企業実体と法律上の企業実体とが一致しないという問題を生ずる。商法の規定は明らかに個々の会社に適用される。経営の主体は1つであっても,個々の会社は法律上独立した実体であるから,貸借対照表や損益計算書などの財務諸表は会社ごとに作成されなければならない。したがって,1企業の活動が2つ以上の会社をもって営まれる場合には,企業の経営成績や財政状態に関する情報は,それぞれの会社の財務諸表で示されるだけで,全体的に明らかにされることはない。」「このため,こうした企業について,総合的に経営成績や財政状態に関する情報を示すには,個々の企業の財務諸表を結合して,法律上の企業実体をこえた実質的な企業実体について財務諸表を作成しなければならないことになる。ここに作成されるのが連結財務諸表である。連結財務諸表によって,個々の会社の財務諸表では明らかにされない企業集団としての経営成績や財政状態に関する情報が提供されることになる。」「もちろん連結財務諸表を作成したからといって,個々の財務諸表が不要になるわけではない。連結財務諸表では,収益力の高い会社と連結したため,他の会社の収益力の低さがかくされてしまうことがある。また債権債務とか配当可能利益などの法律的な関係は連結財務諸表ではなく,個々の会社の財務諸表から明らかにされる。したがって,連結財務諸表と個々の会社の財務諸表とは,代替的な関係ではなく,補完的な関係にある・・・・。」(234,235頁)。
(イ) また会計学辞典の『連結財務諸表』の用語の解説として,「企業活動が会社の有する個々の法人格によって区切られた境界を越え企業集団によって一体的に遂行される場合,個々の集団構成会社の個別財務諸表では集団の状況はもとより個々の会社の状況についても的確な判断を可能とする情報は得られない。
このような認識にもとづき,法人格という個々の会社が有する法的境界にとらわれることなく,企業集団の財務諸表を単一の企業の財務情報として提供する・・・(ことにしたのである)」。
(ウ) このように,かかる関連企業群において,連結財務諸表の作成が義務付けられているのは,1個の会社の財務状況のみを開示したのでは,つまり,関連子会社等の財務状況をも連結させて一括開示しなければ,投資家が,その投資判断を誤るおそれがあるからである。
(2) 以上の認定事実を前提に検討する。
 確かにEは信用保証をするにつき,独自の審査をしていないのみならず,保証料等の取立てはもちろん,代位弁済後の求償債権の回収も原告に依頼しているなど,現段階において,原告との間に実際上は強い密接・依存関係(代行等)があるばかりでなく,とりわけ借主の立場からみれば,例えば,原告において,自らの債権の回収率を高めるべく,Eの当該保証料等に相当する額を利息に含めて契約した場合と,100パーセント出資子会社であるEを設立し,同社が保証料等を取得する代わりに,原告の利息が低くなる場合とで,何らの差異もない(前記のとおり,Eの担当者は,現にEが存在・介在しても,原告の顧客にとってはメリットがない旨自認している)。
 しかしながら,Eは,保証料等を収入源として独自に運営され,かつ原告に対し,現に代位弁済金として支払っているほか,連結会計上違法な処理をしているとも認めがたい上(E自体が形骸化しているとは言い難い。),一般的に,ある企業が自らの一部門を独立させて子会社を設立させ,その100パーセントの株式を保有するといった企業群なるものは,商法上も,そして実際上も多く認められる事態であり,しかも一般の信用保証会社において,保証料等を借主から徴求すること自体が一般的に,利息制限法3条に反しそもそも許されないとまではいえないと思料される中,例えば貸付先に返済能力に乏しい事情があれば,貸倒発生率との兼ね合いで,保証料等がそれなりに上昇することもまた,企業経営としてはやむを得ないともいえなくないのであって,そうした場合とを比較対照しつつ,Eと原告について検討しても,実際的にみて両社は密接的な関連・連携・代行・共助等があるかにみえるとはいえ,原告とは別個独立の法的主体であって,それぞれが税務上課せられた各自の義務を十全に果たすことやその他各々の関係者との権利義務関係の処理をも含めて,経済活動の独自性がそれぞれ認められねばならない(前記のとおり,連結財務諸表を作成すれば,E及び原告につき,各個別の財務諸表を作成しないで済むものではない。)のであり,従って,Eが,原告に代位弁済をする前提として,自ら保証料等を借主に徴求することが,権利濫用的な場合にあたるなどとして許されないなどと即断することはできず,そうだとすると,Eの徴求した同保証料等が利息制限法3条にいう「みなし利息」に該当すると断定することにもやはり躊躇を覚えざるを得ない。
 もとより,本件の利息等その他保証料等の支払の結果をみる限り,借主に過大な負担を強いているとも見られないではなく,しかも高金利等は,社会を支えている実体・実動経済から多くを収奪し,これをいずれ疲弊・枯渇させることにもなるとの意見や批判等は,つとに聞かれるところである。
しかしながら,社会全体における金融制度や会社組織制度のあり方及びこれに対する規制等は,そもそも立法政策等によるところが極めて大きいのであり,かつ平成11年に法改正がなされている中,利息制限法3条の文言その他商法及び民法等の現行法の解釈論としては,前記のように解せざるを得ないと思料される。
(3) そうすると,被告らにおいて詳細に展開する主張を逐一勘案し,かつ例えば,Eにおいて,保証料等の徴求につき,原告をして取り立てさせているなどの事情があるとしてもなお,本件の場合に,利息制限法3条との関係ではまさに法人格が否認される場合であるとか,あるいは権利濫用(参考:最高裁判決昭和57年12月17日裁集民137号589頁)の内実を持つなどと即断するに足りる証拠はないのであって,結局,同保証料等が利息制限法3条にいう債権者が取得する金員であるところの「みなし利息」に該当すると断ずることもできないというほかない。
 被告らの主張は,いずれも理由がない。

2 争点(2)(制限超過利息の元本充当計算方法・相殺等)について


(1) 被告らは,本件貸付けは,原告と被告丙との間の包括的基本契約に基づき,借換えと借増しが一連のものとして繰り返されるにすぎない連続した1個(又は数個)の貸付けである旨主張するので,検討するに,確かに,前掲証拠によれば,本件包括基本契約は,被告丙と原告の手形貸付期間は5年とされ,特段の申し出がないときは,同一条件でさらに5年間継続される合意がある上,2回目以降の貸付けは約束手形の振出しを条件としてのみ行われ,1000万円の元本極度額の範囲内で貸付けが反復されることになっていること,各貸付けの弁済期日の1か月ないし10日前ころ,原告が被告丙に連絡して,次なる貸付けのため,手形の振出交付を求めていたこと,かかる各貸付けは,前回の手形の決済日当日になされていたことが認められ,被告らの主張に副うかにも思われる。
 しかしながら,前記本件包括基本契約を見ても,これに基づき順次行われる一連の貸付けが当然に1個のものとみなしているなどということはできないばかりでなく,原告の貸付金の弁済は手形決済によるのであり,かつ被告丙の当座預金に振り込まれた金員は,かかる決済のために使用することが一応当事者間で予定されているとはいえ,これを原告において確実に守らせる手だてはそもそもない(包括基本契約に明文で記されているわけではないし,仮に記されていたとしても,そもそも原告は債務者において別の用途に使うことを阻止できない。)。
のみならず,前掲各証拠等によれば,本件包括基本契約に基づき,原告が被告丙に貸し付けるにあたっては,各貸付けの都度,被告丙から貸付金元本を額面とする約束手形の振出・交付を受けていること,各貸付けの弁済期日(手形の満期日)において,次なる貸付けが行われるが,その手形額面と常に同額の貸付けが行われるわけではなく,かつその際の利率等は同一では必ずしもないこと,被告丙の手形による交付をまって,原告から利息等を差し引いた額が被告丙の当座預金口座に振り込まれていたこと,平成7年8月4日までの貸付けのために振出し交付された手形は全部決済されていたことが認められ,これによれば,手形が振り出されるとともに,実際にこれと連関・対応する金銭の移動がある本件貸付けの態様からすれば,本件の各貸付けは,それぞれ金銭消費貸借における要物性の要件を満たしているのであり,それぞれ別個の金銭消費貸借が成立したというべきはもちろん,各貸付けにかかる債務は,まさにこれに対応して振り出された手形の決済をなすことによってこそ,弁済されるべきものと解するのが相当である。
 そうすると,本件各貸付けは,それぞれが別個のものというべきであるから,その点に関する被告らの主張は採用できない。
(2) もっとも,以上に対し,被告らは,
ア 仮に本件各貸付けが別個独立のものであるとしても,昭和39年及び昭和43年各最判により確定した理論によれば,ある貸付金につき,過払金が発生した場合には,当然に他の貸付金に充当されるのであり,
イ また仮にそうではないにしても,過払金が生じている状況下で,その返還を求めることなく,新たな借入れをしたことをもって,黙示的に過払金と新たな貸付けとを相殺する旨の意思表示をしたから,いずれにせよ,一連の本件各貸付けが1個の貸付けとみなすことと同じ結論になるなどと主張する。
 しかしながら,前者の点については,そもそも被告らの引用する最高裁判例は,あくまでも当事者間に複数の貸付けが存在する場合の過払金の充当に関するもので,かつ基本的に当事者の合意(充当特約)に従って充当されるとしているにすぎないところ,本件については,前記(1)のとおり,各手形貸付金は,その支払期日に,1回毎に個別に決済処理されることが合意されており,その決済の都度,貸付元本は消滅していた以上は,その充当の対象となるべき元本は消滅していた(それととともに過払金が発生していた)のであって,結局,本件では,民法491条の適用を排除する特段の事情があったと認めるのが相当である。
 また,後者の点についても,本件各貸付けの別個独立性を前提とする以上,被告丙について,その過払金が発生している場合に,新規貸付けが行われる度に,具体的に特定して相殺の意思表示をしていたとは認められない上,さらに前記(1)の決済の処理方法の合意に照らせば,かかる場合に当然に黙示の相殺の意思表示がなされたと認めることも困難である。なお,黙示の相殺等を認めたものと思われる乙52(広島地裁判決平成12年(ワ)835号等事件)の理は,そもそも当裁判所とはその前提を異にするものであって,採用の限りではない。
(3) 以上のとおりであって,被告らの各貸付けの単一性及び充当計算等に関する主張は,いずれも理由がない。

3 争点(3)(過払金の有無,利息相当金の割合等)


(1) 消滅時効
 原告は,被告丙の原告に対する過払金返還請求権につき,平成元年11月2日から平成3年3月29日までの過払金及び損害金は,既に時効により消滅したとして,平成13年6月1日付け準備書面をもって,時効を援用する旨の意思表示をしたことが認められる。
これによれば,平成元年11月2日から平成3年3月29日までの過払金及び損害金は,時効により消滅したことになる。
(2) 利息相当金の割合について
 この点,原告は,本件不当利得は民法上の原因に基づいて,発生したものであるから,民法703条に従い,年5分の利息相当金の支払義務を負うにすぎないと主張し,これに対し,被告らは,原告は,悪意の不当利得者であり,民法704条に従い,年6分の割合による利息相当金の支払義務がある旨主張する。
 そこで,以下,検討する。
ア 最高裁昭和38年12月24日判決によれば,銀行に対する不当利得返還請求をする場合において,「不当利得における善意の受益者が利得の返還をすべき場合」において,「前記事実関係によれば,本件不当利得の返還は価格返還の場合にあたり,原物返還の場合には該当しないのみならず,前記運用利益をもって果実と同視することもできないから,右運用利益の返還義務の有無に関し」,占有物の返還に関する民法189条1項の「適用を論ずる余地はな」く,「たとえ,被上告人が善意の不当利得者である間に得た運用利益であっても,同条の適用によってただちに被上告人にその収取権を認めるべきものではなく,この場合右運用利益を返還すべきか否かは,もっぱら民法703条の適用によって決すべき」である。「そこで,本件(の)運用利益」につき検討するに,「およそ,不当利得された財産について,受益者の行為が加わることによって得られた収益につき,その返還義務の有無ないしその範囲については,社会観念上受益者の行為の介入がなくても不当利得された財産から損失者が当然取得したであろうと考えられる範囲においては,損失者の損失があり,したがって,それが現存するかぎり同条にいう『利益ノ存スル限度』に含まれ,その返還を要(し,)本件の事実関係からすれば,少なくとも上告人が主張する前記運用利益は,受益者たる被上告人の行為の介入がなくても破産会社において社会通念に照らし当然取得したであろうから,被上告人はかりに善意の不当利得者であっても返還義務を免れない。
してみれば,右運用利益につき,被上告人が善意の不当利得者であつた期間,民法189条1項によりこれが返還義務のないことを前提として,上告人の本訴請求中被上告人の不当利得した金員に対する運用利益の支払を求める部分を棄却した原判決は,右の点に関する法令の解釈適用を誤ったもの」であるとした。
イ この最高裁判決の理論を推及するなら,被告丙は,原告に対し,過払金に年6分の利息相当金を付した金額を請求できる権利があると解される。
この点,確かに,不当利得の発生自体は,原告の主張するとおり,民法上の原因によって発生するともいえなくなく,しかも最判昭和55年1月24日によれば,商行為である金銭消費貸借に関し,利息制限法の制限を超えて支払われた利息等についての不当利得返還請求権の消滅時効期間は10年であるとされているとはいえ,しかしながら,不当利得返還請求権は,一定の財貨の取得・移動が形式的には必ずしも不当でなくとも,実質的に不当な場合に公平の観念に従って,その調整を図るものであるところ,原告がそもそも金融業を営む商人であるのはもちろんのこと,被告丙についてみても,本件の取引は手形貸付であって,原告との間で,前記のとおり,本件包括基本契約であるところの手形貸付取引契約を締結しているという意味で,絶対的商行為を行う者(商法501条1項4号[大判昭和6年7月1日民集10−498],あるいは2号)なのであって,もし本件に関し,原告の不当利得に関する行為の介入がない場合には,被告丙において,手形における利息年6分に相当する金額を,社会通念上,取得ないし維持確保することができたといいうるのであり,従って,手形貸付にまつわる被告丙の原告に対する過払金については,この割合の額の利息相当金を付したものを原告において返還することが,公平の理想にかなうものと解されるからである。
そうでないと,手形行為による利息は年6分であるのに,これを振り出して手形貸付けを受け,その結果,過払金が生じた場合には,年5分の利息相当金が付されるにすぎないというのでは,余りに均衡を失し,妥当でない(しかも,原告は,金融業者であって,かかる過払金等を元手に年6分を大きく超える利率で貸し付けていることや,この種過払の有無等に関しては,金融の専門家として高度の注意能力があることをも併せ勘案すべきであり,少なくとも,前記のとおり,商事法定利息に相当する年6分の利息相当金を付するのが公平・妥当である。)。上記昭和55年の最判は,消滅時効に関する判例であって(不当利得返還請求をする側にとって有利な解釈したものともいえなくない。),不当利得の返還範囲に関する民法703条ないし704条の当審の解釈とは必ずしも相容れないものではない。
ウ 仮に,前項のとおりでないとしても,原告は,金融業者であって,金銭消費貸借及び金銭回収並びにその弁済充当関係等につき不断に注意し厳正に管理しているのであって,また利息制限法の趣旨やその過払金返還に関する最高裁判例等にも照らせば,過払の発生については,当然に把握していたものと評価せざるを得ず,そうだとすれば,原告は,被告丙の過払いにつき,少なくとも民法704条の悪意の不当利得者であったということができ,その場合には,過払金に年6分の金員を付して返還するのが適当であると思料される。
エ 以上のとおりであって,この点の原告の主張は採用できない。

4 まとめ


(1) 利息相当金計上前
 平成3年1月21日以降の制限超過利息を算出した結果,被告丙の原告に対する過払金は,合計346万0672円(309万7691円及び36万2981円)であるところ,前記第2の2(4)の785万円から,同(5)の弁済金300万円を差し引いた,485万円の残元本債権とを,対当額で相殺する旨の意思表示をし,同意思表示は平成11年2月18日に到達した。
 これによれば,原告は,被告らに対し連帯して138万9328円の債権を有していることになる。
(2) ところが,前記のとおり,過払金には年6分の利息相当金を付して返還すべきであり,その額は,別紙計算書のとおり,合計48万7720円であり,これをも差し引くべきであり,これによれば,原告は,被告らに対し連帯して90万1608円の債権を有していることになる。
5 結語
 そうすると,原告の各本訴請求は,被告らに対し連帯して90万1608円及びこれに対する本件訴状の送達の翌日である平成11年7月27日から支払済みまで年30パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余の請求は理由がなく,いずれも棄却を免れない。
 よって,主文のとおり判決する(訴訟費用につき仮執行宣言は付さない)。

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控訴人
控訴人P2の 関係では,同人が15年勤続となった平成7年4月1日の時点に おいては,同人の前記認定のような職務内容,成果,専門性の程 度等を斟酌すれば,前記と同じく,被控訴人の措置は,違法な行 為と評価することができ,その後違法行為が継続しているという べきである。
すなわち,上記の期間の一般職の給与体系及び事務職の給与体 系は,職掌別人事制度導入前の男女のコース別のA体系(男性) 及びB体系(女性)が基本的に維持されたものであり,上記のよ うな相当な賃金格差は,A体系,B体系の賃金格差をそのまま引 き継いだものであるところ,そのようなA体系,B体系の格差は, かつて,女性社員の一般的な勤続年数が極めて短く,処理の困難 度の低い定型的,補助的な業務を中心として担当していたのに対 し,男性社員が成約業務など比較的処理の困難度の高い業務を行 っていたという職務内容の截然とした差異に対応していたもので あるが,既に昭和50年代から女性でも勤続年数が長く,経験を 積み専門知識を身につけた者が出て来ており,男性と女性が截然 と区分される別の職務を担当するのではなく,男性の行う職務と 女性の行う職務が重なる場合があったところ,昭和50年3月に は25.9歳であった被控訴人の女性社員の平均年齢は,平成4 年3月には32.8歳となり,昭和61年12月当時で被控訴人 に勤務する女性社員618名のうち,30歳以上の者は約46パ ーセント,40歳以上の者は約17パーセントと相当の割合を占 め,これら長期勤続の女性社員の中には一部成約業務を担当して いた者や履行業務であっても経験を積んで専門知識や一定程度の 交渉力,語学力により重要な仕事を行っているものが相当数おり, 少なくとも職掌別人事制度の下で,旧一般1級と同じ職務,同等 の困難度の職務を行うことがあったものと推認され,上記4名 (控訴人P2については後記平成7年4月1日以降)もその中に 含まれていたものであって,そうするとこのような相当数の女性 社員に関しては,女性社員の勤続年数が一般的に極端に短く,処 理の困難度の低い定型的,補助的な業務を中心として担当してお り,男性社員の職務と截然とした差異があったことに対応するA 体系とB体系をそのまま引き継いだ一般職の給与体系と事務職の 給与体系の間の格差の合理性を基礎付ける事実は平成4年4月1 日の時点で上記年齢の旧一般1級との関係では既に失われていた (控訴人P2の関係では,同人が勤続15年を経た平成7年4月 1日の時点で,同人と当時の旧一般1級の30歳程度の男性社員 との間に賃金について前記認定のような相当な格差があったこと に合理的な理由は認められないものとなった。)ものである。